実数と計算

私はいろんな興味を持ってますが,もっとも大切な研究テーマは、 です。皆さんご存知のように、コンピュータは0と1という記号の世 界で動いています。デジタルとは、通常、このような、離散的な記号で表現さ れる世界をさします。それに対し、我々の存在する3 次元空間はアナログであり連続に広がっていますし、数学が扱う対象も、 実数など、連続なものの方が多いでしょう。こういった連続なものに対し、記 号操作である「計算」をどのように導入できるか考えています。

空間がどのように連続につながっているかを表現する道具として、「位相」と いう概念があります。実は、計算と位相とは密接に関係しています。非常に荒 い説明ですが、位相では、「近くの点の集まり」(近傍)という概念が重要で すが、近くにあるという観察は、計算によって近似を求めることにより行われ ると考えられます。そして、人間ができるのは、この近似を求めることだけで あり、空間内の個々の点を直接扱うことはできません。観察によって得られた 情報を総合して、目的の点について考察するだけです。このように、計算を通 して位相(空間のつながり方)について考えると、普通の教科書に載っている のとは違った位相の見方ができます。

私は、グレイコードというコーディングが、実数の上に素直な計算構造を提供 することに気がつき、それを通して、計算的に位相空間について考える(数学 的な)研究をしています。また、それと関連して、計算概念そのものを考える、 (計算機科学的な)研究もしています。計算機科学、位相空間論、数理論理学、 幾何学など、いろんなものが関連しています。デジタルとアナログをつなぐ研 究ですから、両方の概念が混じりあって、面白いです。

その後,グレイコードの考え方をより一般的な空間に拡張した概念として, dyadic subbase を考え,dyadic subbase をもつ位相空間について考えました。

また,最近では,「止まらない」計算も扱うような計算体系と論理との関係 に興味を持ち, 直観主義一階述語論理に inductive/coinductive な定義を加えたプログラム 抽出のための論理体系 IFP (Intuitionistic Fixed Point Logic) およびそれに並列性 を加えた体系 (CFP) について研究しております。IFP, CFP では,グレイコード 表現を自然に表現することができます。