空間がどのように連続につながっているかを表現する道具として、「位相」と いう概念があります。実は、計算と位相とは密接に関係しています。非常に荒 い説明ですが、位相では、「近くの点の集まり」(近傍)という概念が重要で すが、近くにあるという観察は、計算によって近似を求めることにより行われ ると考えられます。そして、人間ができるのは、この近似を求めることだけで あり、空間内の個々の点を直接扱うことはできません。観察によって得られた 情報を総合して、目的の点について考察するだけです。このように、計算を通 して位相(空間のつながり方)について考えると、普通の教科書に載っている のとは違った位相の見方ができます。
私は、グレイコードというコーディングが、実数の上に素直な計算構造を提供 することに気がつき、それを通して、計算的に位相空間について考える(数学 的な)研究をしています。また、それと関連して、計算概念そのものを考える、 (計算機科学的な)研究もしています。計算機科学、位相空間論、数理論理学、 幾何学など、いろんなものが関連しています。デジタルとアナログをつなぐ研 究ですから、両方の概念が混じりあって、面白いです。
その後,グレイコードの考え方をより一般的な空間に拡張した概念として, dyadic subbase を考え,dyadic subbase をもつ位相空間について考えました。
また,最近では,「止まらない」計算も扱うような計算体系と論理との関係 に興味を持ち, 直観主義一階述語論理に inductive/coinductive な定義を加えたプログラム 抽出のための論理体系 IFP (Intuitionistic Fixed Point Logic) およびそれに並列性 を加えた体系 (CFP) について研究しております。IFP, CFP では,グレイコード 表現を自然に表現することができます。