イマジナリーキューブ

シェルピンスキー四面体

正四面体 S の 4 個の頂点を中心にして S を 1/2 に縮小したものを合わせると,穴あきの正四面体 S1 ができます。次に,4 個の頂点を中心にして S1 を 1/2 に縮小したものを合わせてると,16 個の正四面体からなる立体S2 ができます。S2 に対してまた同じことを行い,64 個の正四面体からなる立体S2 を作ります。これを繰り返すと,立体がどんどん小さくなっていく列 S, S1, S2, S3, .. ができます。 これを無限に続けていってできる立体(より正確には, S, S1, S2, S3, .. 全ての共通部分)をシェルピンスキー四面体といいます。

シェルピンスキー四面体に対して 4 個の頂点を中心にして 1/2 に縮小してできる4個の立体を合わせた立体をつくっても,元のシェルピンスキー四面体に戻ります。このように,自分自身を縮小したものをいくつか合わせると元の図形に戻る様な図形は,自己相似図形と呼ばれています。また,より一般に, どの部分を拡大しても,全体と同じ様な構造が存在している時,そのような構造をフラクタルといいます。

シェルピンスキー四面体はイマジナリーキューブ

下の写真は,立方体の箱に入れた S, S1, S2, S3,... を3Dプリントで作成したものです。 これらの立体は,全てイマジナリーキューブです。写真を見ながら考えてください。(このことは,数学的帰納法で証明できます。)

そして,その極限のシェルピンスキー四面体もイマジナリーキューブです。(そのことを証明するには,大学で習うような位相的な考察が必要になります。)

シェルピンスキー四面体の影

シェルピンスキー四面体の影も自己相似図形です。(シェルピンスキー四面体は物理的に作ることができないので,その影を考えること自体がナンセンスで,「射影」という数学用語を使うべきです。しかし,ここでは,影という言葉で通します。)シェルピンスキー四面体の近似模型を,光のもとで回転させると,影が連続に変化していきます。シェルピンスキー四面体はイマジナリーキューブなので,その中にはもちろん,正方形もあります。

ほとんどの影は,近似立体ではなく完全なシェルピンスキー四面体を考えた時には面積が 0 になります。しかし,正方形以外にも,下の写真のように面積を持った影も現れます。
この影は,下図の形をしています。これも自己相似図形で,この図形を 1/2 に縮小したもの 4 個集めたらもとに戻るのですが,わかりますか?
下の図のそれぞれの色はこの図形を 1/2 に縮小したもので,これら4個を合わせると元の図形に戻ります。
次の図形も,シェルピンスキー四面体の影として現れるので,自己相似図形なのですが,わかりますか?
最初の図形は,次の様に自分の縮小像4個でできています。これも,面積をもっています。
2個目の影は,シェルピンスキー三角形と呼ばれる形です。この図形は,自分自身の1/2 の縮小像3個でできていますが,そのうち一つは,同じところに2個の影がきれいに重なっているので,4 個の1/2 の大きさの像からできています。3個目の影は,4つの同じ形の影が,一部重なってできています。 この2個の影は,近似立体を物理的に 3D プリントで作成したものの影なので面積がありますが,本当のシェルピンスキー四面体の影を考えると,影の面積は 0 です。

このように,シェルピンスキー四面体の影は,面積をもつものと,持たないものがあることがわかります。どういう方向から光をあてると,面積をもつ影ができるのでしょうか?それについては,「フラクタルの影」の章で説明します。